ASSETLEAD COLUMN

会長の社会・経済コラム(2019/4/1)

平成のスターはイチロー選手と安室奈美恵



いよいよ平成の幕が降りようとしている時に、イチロー選手の引退のニュースが飛び込んで来ました。
私も夜中にテレビで偶然、イチロー選手の球場で試合中にも拘らず、マリナーズの選手による一人一人のハグによる出迎えと観客の総立ちの拍手声援の場面に釘づけにされました。また、試合後の夜中の終電であるにも拘らずほとんどの観客が球場に残り、最後のイチロー選手の雄姿を一目見んという高揚感と、そこに再登場してグランド一周してファンに応えたイチロー選手の心意気に人知れず感動を覚えました。当然その後の引退の記者会見もついつい見てしまいました。

イチロー選手はこれまでも、数々の名言を残しており、かっての言葉で「4千本安打を打つには、8千回以上は悔しい思いをしてきた。その悔しさに、常に向き合ってきたので、誇れるとしたらそこじゃないか」と4千本の安打を実現した時、記者に「今何を誇りに思いますか」と聞かれて答えた言葉であるが私は凄い人間だなと備忘録に残してありました。

4千本打ったことを誇りに思うのでなく、そのための凡退の数々に向き合う姿勢が、修行僧のような孤独で高潔さを漂わせる風格がありました。元々、アメリカでも彼の打撃の所作が腕を伸ばしバットを立て、それからバットをゆっくり回転する動きが剣豪のサムライを彷彿させるものとして人気でした。彼ほど、野球ファンだけではなくて、広く人になにかしらの影響を与えたプロ野球選手は後にも先にもいないでしょう。

彼の野球へのひたむきな姿勢に、多くの人々がまるで求道者のような感覚を覚えたに違いありません。それは彼が単なる天才としてではなく、あくまで静かで小さな努力の積み重ねでここまで来たという、親近感を凡人は思うからではないでしょうか。昭和の野球の大スターは文句なく長嶋さんであり、王さんでした。それはもう全く庶民がかなわない天才のスターでした。平成の初めにデビューして、平成の終わりでバットを置いた、まさしく平成の大スターはたゆまず努力を続ける人でした。引退の記者会見でも印象に残る一番彼らしい言葉がありました。

「引退の決断に後悔や思い残しは無いか」と聞かれて

「今日の球場での出来事、あんなものを見せられたら後悔などあろうはずがありません。もちろん、もっと出来たことはあると思います。結果を残すために、自分なりに重ねてきたことはありますが、人より頑張ってきたとはとても言えないし、そんなことは全くないですけど、自分なりに頑張ってきたということはハッキリ言えるので、重ねることでしか、後悔を生まない、ということはできないのではないかと思います」とコメントしました。

誰でもその頑張りは誰よりも凄いと思う我々にとって、淡々と人より頑張ったとは思わないという彼の言葉にただ感心するばかりです。彼の物差しには他人との比較という概念はなくてあくまでも自分との戦いであり、自分の目標にひたすら集中していたかがわかります。イチロー選手には他者が見た判断基準である、地位や名誉よりも自分の心と向き合うことに徹し、その集大成として今のイチロー選手をますます輝かせるのだと思いました。

男性の平成の大スターがイチロー選手だとすると、平成を代表する女性の大スターは誰であろうかと考えました。昭和の大スターはすぐ出てきます。美空ひばりであり、石原裕次郎がその代表でしょう。平成でデビューして、平成で終わったスターは誰かというと、安室奈美恵さんが思い起こされます。イチロー選手とくしくも同じ平成4年でデビューして平成30年9月に、40歳で平成の歌姫は引退しました。

経済成長が停滞して、音楽市場や野球人気が伸び悩む中で、粛々とやり続けた毅然とした姿はお二人に共通しています。SNSばやりの世の中でステージ以外、スタジアム以外の活躍が表に出てこなくて、本人はただ音楽を野球をやり続ける。

安室さんは、女性が自分をプロデュースする時代の先駆けで、ステージを2時間半、走り切るライブのために体力づくりに励む。どういうわけか二人ともかなりの細身であるにも関わらず、自己管理は完璧である。安室さんもメディアの露出を絞り、本当のファンだけにメッセージして人気取はしないという。時代や他人に迎合しないで、自分のために生きる。そして40歳でリセットするその潔さに、新しい世代のスターを見ることができるのです。やはりこのお二人は平成という時代が生んだスターなのでしょう。

次の新しい元号「令和」ではどの様なスターが産まれるのか、楽しみであります。
 

飯塚良治(株式会社アセットリード 取締役会長)

オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。
現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。