ASSETLEAD COLUMN

会長の社会・経済コラム(2019/2/18)

政府統計のずさんさはなぜ起きたか。



我が国の基幹統計への信頼が、一気に落ち込んでいる。
これまで、多くの経済現象が政府統計によって解明され、そこで得られた分析が、政策立案にも役立てられてきた。その根底をなすのは、特に今回問題となっている「毎月勤労統計」を始めとする基幹統計の正確さに対する信頼だった。この厚労省による「勤労統計」のいい加減さは、人々の政府統計に対する、信認を大きく低下させている。

勤労統計は賃金や労働時間、雇用動向を把握するため毎月実施され、対象は全国3万3千の事業所である。
調査結果は雇用保険や労災保険の給付額の算定のほか、内閣府の月例経済報告、GDPや景気動向指数の算出など幅広く活用される。
従業員500人以上の大会社については全数調査が義務づけられているが、東京都では1500事業所の内500事業所しか調査していなかった。サンプルに偏りがあると賃金などの実態が正しく反映されてこない。
実際、都内の大企業は賃金水準が高いため、これが集計から抜け落ちた結果、雇用、労災保険の過小給付が総額567億、対象者は延べ2000万人に追加給付を余儀なくされている。「無精者はまめだ」という古いことわざがあるが、「さぼってると、あとで大変なつけを背負うよ」ということである。

この勤労統計をめぐっては別の問題も指摘されている。昨年1月に調査対象となる会社を半分入れ替えた。しかも、新たにサンプルに加わった企業の賃金がもともと高かったために、給与総額の伸びが一昨年の1%未満から。1~3%に高まり、雇用者報酬によるGDPを押し上げ、また賃金上昇率も押し上げた。それが安倍首相の経済成果として宣伝されたというのである。真意のほどはともかく、経済の変化を正しく把握するためには統計には対象の継続性が求められる。 いずれの問題の背景にもこのところみられる官僚のずさんで、恣意的で鼻持ちならない、お上意識が目立つのである。厚労省にとって統計はあくまで自分たちの所有物であり、国民の目線は不必要なのである。

国民は自分たちが指導するものであって、自分たちの都合と、お役所の政策を正当化するような証拠があればよいという意識が、正確性や信頼性を二の次とさせてしまうのである。公的統計は広く活用される公共財であり、社会・経済を写す鏡であるからこそ、官僚には古い言葉である「公僕」意識が新しく求められるのである。
 

飯塚良治(株式会社アセットリード 取締役会長)

オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。
現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。