ASSETLEAD COLUMN

会長の社会・経済コラム(2018/12/11)

日産のゴーン前会長逮捕の衝撃と今後の焦点



11月19日。突然、日産自動車のゴーン会長が逮捕され、彼のグローバルな名声もあって、世界のビジネス界にも衝撃が走った。

振り返ると、1999年3月に、経営危機に直面した日産は倒産寸前で国の救済もないまま、ルノーとの提携に最後の望みをかけて、日産の経営トップに就任したカルロス・ゴーンCOOが10月に「日産リバイバルプラン」を発表した。その目標はもう来期には黒字化を達成すること、及び2002年度まで連結ベースの売上高営業利益率を4.5%に引き上げるという内容であった。皆が皆、当然出来るわけないだろうと、嘲笑したものである。ゴーン氏は目標が一つでも達成出来なければ、役員は総退陣すると退路を断った。
もうこの頃の日本企業の経営者にはない、かっての武士道精神をこのフランス人に私は見たことを覚えてる。

その後の組織の改革の急展開と、水ぶくれしてた、国内工場の5つを閉鎖して、下請けも5割に削減した。ルノーとの共有で新商品開発を強化して、生産拠点を集約することで生産性の向上を急ピッチで実行した。人々はコスト・カッターと揶揄したが、日本のおてもり経営者にはない、その経営手腕が日産の再建を見事に果たした。「ゴーン無くして、今日の日産はなし」とするのが世界のビジネス界の常識でもある。

巨額の役員報酬を有価証券報告書に記載しなかったとして逮捕された事件は、日を追っていろいろな問題点が浮かび上がってきている。当初国内の大手メディアを中心として、東京地検特捜部が流す、ゴーン個人の強欲な事件とする情報をどんどん流していた。一方海外メディアは日本と全く異なる視点での報道が目立つ。「日本人の恩知らずの陰謀」「日産の経営陣の排外主義的クーデター」という論調が目立つフランスはいうまでもないとしても、第3国のイギリスのBBCでも「逮捕、拘留、解任は冷静に計画された悪質な日産、検察の攻撃」ではないかという論調である。そして、東京地検特捜部とゴーン前会長らが対立する構図が鮮明になるにつれ、日本でも役員報酬の過小記載という容疑に対しては、世界的な経営者であるゴーン前会長を逮捕するほどの悪質性は無い「形式犯」ではないかという識者の批判も出てきている。特捜部経験のある弁護士は「ゴーン前会長は不記載の報酬を既に受け取っているわけでなく、また会社自体が今後も支払能力が維持されるのは不明のままで将来の退任後の報酬が確定してるとみるのは無理があるから、罪に問うのは形式的な理屈に過ぎない」と疑問を呈しており、また高額とされる報酬が1年で10億という点についても、「日産の企業規模、世界の経営者の報酬のスタンダードから見ても大きいものではない」と指摘している。

またその後も出てきた「17億の資産会社の損失の付け替え」や「海外の居住用住宅の提供」も所有権は日産にあり、その時期の円高からかなりの円安に現状ある点を考えると逆に含み資産となり、大きな損害を会社に与える特別背任の適用はほとんど無理がある。
いずれにしても、今回の逮捕劇は、日本に働く外国のビジネスマンに少なからずショックを与えたことは間違いないことであろう。日本人同様に微罪で逮捕されても、数十日間拘束され、独房で弁護士の立会なしに、長時間にわたって自白を強要される、日本の司法制度に、恐怖感を覚えるはずだ。

また、世界の自動車業界を見ても、EV(電気自動車)への転換期に当るこの時期に、単独の企業によるイノベーションで勝ち抜けられる時代ではなくなっている。今後は、国境の壁を乗り越えて、先進技術を持った企業と共同開発していくことこそが、自動車会社が生き残る唯一の道だといわれている。「ルノー、日産、三菱」の3社アライアンス(提携)は世界第一位の自動車グループに駆け上がる可能性を秘めていただけに、もし、巷に噂される日産自動車と検察当局の日本ファーストの思い込みのクーデターとするならば、くしくも150年前の幕末維新の攘夷運動への先祖返りであり、今後の代償は計り知れぬものがあるとみるが皆さんのご意見は如何か?
 

飯塚良治(株式会社アセットリード 取締役会長)

オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。
現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。