ASSETLEAD COLUMN

アセットリード会長の社会・経済コラム(2018/7/3)

トランプ大統領だけが喜ぶ米朝首脳会談



6/12にシンガポールで行われた、史上初の米朝首脳会談。
この首脳会談は「歴史的な会談」と言われた。

では、その結果はどう評価されるべきか?

日本のメディアは「共同声明には具体的な方策が何一つ明記されていない」といった批判的な反応が主流であった。
日本のメディアのそうした報道を見ると、この会談が具体的な成果があるとでも期待していたのだろうか?と思わざるを得ない。
会談と共同声明の内容が曖昧になることは予想されたことであり、これは当然の結果だと思わない方がかなりおめでたいことである。

なぜ内容が曖昧な会談になるのは必然かということであるが、それはトランプ大統領にとって、今、最も重要なことは今年の11月6日に行われる中間選挙だからである。

伝統的な共和党保守派の支持層に自分がどう見えてるか?
それが、目下の彼の最大の関心事だからである。

トランプさんを支持する人々の多くは、アメリカでも中西部や南部に住んでおり、大半が不景気でとにかく自分たちの生活がよくなることばかり、政治に要求している人々である。

朝鮮半島の非核化にも日本人拉致問題にもほとんど関心がないというより、それらの問題すら知らない人の方が多い。
そういう保守的で内向きの人々からの人気を維持することがトランプさんの関心事のほとんどなのである。

トランプ大統領自体も、外交や安全保障に関する深い洞察があるわけではない。貿易問題について度々、強引な主張をするが、それはアメリカの国益や世界との関連性を考慮しているからではなく、支持者へのアピールという観点が色濃く反映している。中西部や南部でトランプを支持している人達の多くは製造業、農業に従事し、海外製品の輸入に苦しめられているからである。

北朝鮮対策もトランプ大統領にとっては支持率を維持するための手段に過ぎない。一般の米国人にとって北朝鮮に期待するのは「米国に届く核兵器の廃止」だけだからである。

とにかくこの点についてだけはトランプさんの思惑通り首脳会談は進んでいて、朝鮮半島の全面非核化や拉致問題をどれだけ具体的に進めるかは、トランプさんにとって曖昧なままでも、痛くもかゆくもないのである。

トランプ大統領が徹底しているのは、従来の支持者達以外に新たな支持層を広げることにまったく興味がないことで、意見の違う人々に働きかけることなど時間の無駄だと思っている。自分を大統領に選んだ人達からの支持だけをしっかりつかんでおくことだけが中心の政策で、それが彼の関心事の全てであるといっても過言ではない。

アメリカの大都市圏の人々やメディアには、不人気のトランプさんがアメリカのリーダーに居続ける不思議さは、この曖昧な首脳会談でも成功であるとして支持率が上がる、トランプ支持層の強固な存在なのである。

貿易摩擦やそれからくる経済的な軋轢がやがてトランプ支持層の生活を脅かすまでには相当なタイムラグがあるので、自由貿易にとっての逆風はまだまだ続くと覚悟するしかないだろう。

飯塚良治(株式会社アセットリード 取締役会長)

オリックス信託銀行(現オリックス銀行)元常務。投資用不動産ローンのパイオニア。
現在、数社のコンサルタント顧問と社員のビジネス教育・教養セミナー講師として活躍中。